〜《日本のわらべうた と ソルミゼーション》③〜
まず、下の表を見てください。
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ド : ラ ラ ソ ソ ソ : : : ミ ミ ミ ミ レーーレーーレーーレーーレ ド ド ド ド : : : ラ ラ ラ ソ ソ : ミ
👆これは、ペンタトニックの各音が、『レ』を中心にして並べると、上下に一体どのような音程関係になっているのか?ということを表わした図です。
いかがですか?大変美しく見事なシンメトリーを成している‥ということが分かりますよね。
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実は、子ども達にわらべうたの最初の2音を《レ〜ド》と読ませるのは、この美しい音の法則性を活用するためだったのです。この音の広がりを、その順番通りに教えていくと、日本の子どもたちに大変合理的に、かつ、いとも簡単に分かりやすくソルミゼーションを理解させてゆくことができます。
詳しくご説明しましょう。
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⬇︎下の表は、今度は、子ども達にソルミゼーションを教える時の順番通りに〈わらべうたの構成音〉を並べた図です。先程の《音のシンメトリー》の法則性が十分に生かされている…ということがお分かりになるでしょうか?
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ラ ラ
ソ ソ ソ ソ
─────────────:──:──:─────:
ミ ミ ミ ミ ミ ミ ミ
レーレーレーレーレーレーレーレーレ
ド ド ド ド ド ド ド ド ──────────:───────:──:──:───:
ラ. ラ ラ ラ ラ
ソ ソ
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧
具体的な教材例を上げて見ていくことにしましょう。
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①先程ご説明したように、まず、色々な2音のわらべうたを歌い、『レ〜ド』の旋法的な読み方に慣れていきます。
┃ ┃ ┏┓┏┓ ┃ ┃ ┃ Z レ r r r r r ド dddd (こーめーついたらはーなーそー)
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②『ミ』の音を教えた時点で、既に調性的な曖昧さは無くなってきます。
┏┓ ┏┓ ┏┓ ┃ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┃
ミ m m m m
レ r r r r r r
ド d d d d
(おてぶしてぶし てぶしのなかに)
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③さらに下側の短三度離れた『ラ』の音を教えれば、もう短調の主和音⇨〈ラ、ド、ミ〉が揃います。
┃ ┏┓ ┃ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┃ Z ミ mm レ r rr r ド d dd d ラ l (かーわのきーしの みずぐるま)
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④逆に、短三度上側の『ソ』の音を教えた時点で、〈ド、ミ、ソ〉の長調の響きにも慣れてきます。
┏┓ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┃ Z ソ s ミ mm mm m m レ r r ド dd dd (なかそとそとなかなかなかほぃ)
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⑤下の『ラ』から、上の『ソ』までがある歌を歌えば、もうペンタトニックの5つの音が揃ったことになります。
┃ ┃ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┃ Z ソ s ミ m レ rr r rr r ド d d ラ la (うっさぃだるまのだるまの子)
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⑥オクターブ上の音や、オクターブ下の音は、実は子どもたちにとってすぐに〈同じ音〉として認識されるわけではありません。ですから、あらためて別の歌を使って教えていく必要があります。しかし、高い『ラ』を教えた時点で〈ラドレミソラ〉というオクターブの音域に達しますので、子ども達は、短調系の《ラ・ペンタトニック音階》を理解することができます。そして、1オクターブも離れた音がどうして同じ名前で歌われるのか?という、その意味についても考えさせてゆくことができます。
┃ ┏┓ ┃ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┃ Z ラ l ソ s s ミ m m m レ r r ド d d ラ l (こーこのよーうでいっちょうよ)
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⑦下側の低い『ソ』の音は、いわゆる〈律旋法〉を支える重要な音です。しっかりと時間をかけて教えましょう。この旋法によるわらべうたは、西日本や朝鮮半島の歌の中にたくさん見つけることができます。西洋音楽の長調のような明るい響きの音階です。
┏┓ ┏┓ ┃ Z ┏┓ ┏┓ ┃ Z ミ m m レ r r ド d d ラ l l ソ s s (三といちにー 三といちにー
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⑧低い『ソ』から、高い『ラ』までを使えば、もう本格的な民謡が歌えます。
♪┏┓ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┃ ┏┓ ⚪︎ ラ l l ソ s s s ミ m m m- レ r r ド d d ラ l l—— ソs (おれがうとぅたらでぇくさんがわろうた)
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⑨さらに、高い『ド』の出てくる歌を使って、長調に繋がる〈ド・ペンタトニック音階〉を教えておくことも大切です。
┃ ┏┓ ┏┓ ┃ ┏┓ ┏┓ ┏┓ ┃ ド d ラ l ll ソ ss ss s ss s ミ m レ ド (五ーおぃてまわれ わしゃ碁は打たぬ)
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さて‥、
ここまでの説明を聞いて、なんだか不審そうな顔をしていらっしゃる方もおられますね。
わかります。‥多分、こういうことでしょう。
『なんで〈fa〉や〈ti〉の音を教えないんだ⁉︎』‥
‥‥‥
そうなんです!〈fa〉や〈ti〉は、まだ教えないんです。‥こんなに広い音域の歌を歌わせているにもかかわらず…です。
『‥ディアトニック(=長調や短調の音階)から出発して,何か例外的な,奇妙なものでもあるかのように,のちになって5音階(=ペンタトニック)にバックするのは, ゆがんだメトードといわれなければならない。いまだに,5音階の音楽を全く無視している教科書や教則本が一般に使われていることについて、ここでは語るまい。私たちにとっては, これ以外には,他にどのような礎石も考えられないのだ。また,合理的な教育では, 単純なものから,より複合的なものに向かって進むのがふつうではないか。外国のものであり,時代遅れでもあるメトードに70年間仕えてきた,文化的にいわば奴隷のような人々にとっては,これをやってみることは,至難なことかもしれない。しかし,私たちは,すべての向上を望む教育者が, この私たちの直面している過渡期を, より短くし,より混乱の少ないものにするために, 自分なりの力を惜しまないことを希望したい。』 〜コダーイ『333の読み方練習』の解説より〜〜
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