コダーイメソッドとは何か?《連載第22回》

〜【ポリフォニーと和声】⑦〜

 ひと口に〝ポリフォニー〟と言ってもその種類には色々なものがあります。しかし、それは大雑把に分けて、次のような2つの系統に分類できるでしょう。。  ↓

【a】リズムの違いやズレを楽しむポリフォニー【b】音の高さの違いを楽しむポリフォニー

 例えば、先程のわらべうたのカノン等は、どちらかと言えば【a】の要素の強いポリフォニーだと思います。

 試しに、「なべなべ」のカノンを(‥内的聴感の練習も兼ねて‥)黙ってそのリズムだけ叩いてみてください。


    ♩  ♩   ♩  ♩    ♩  ♪ ♪  ♩  Z
 ├───────┼──────┼────────┼──────┨
     ▪︎    ▪︎     ♩  ♩    ♩  ♩ 


 ♩  ♪♪ ♪♪ ♪♪  ♪♪ ♪♪ ♩  Z
├─────┼──────┼─────┼─────┼─────┼────┨
 ♩  ♪♪ ♩  Z   ♩  ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♩ Z

 カノンですから、当然、リズムだけ叩いてみても違った動きをしていることがわかります。

 このリズム譜を黒板に書いて、子ども達に二人組で練習させれば、それだけでも楽しい課題ですが、さらに〈本当に子ども達が相手の動きを意識しながら歌っているのか?〉‥ということを確かめるために、これを一人でやらせる方法もあります。

 つまり「なべなべ」を歌いながら、自分でそのリズムも同時にカノンで叩くのです。(‥もちろん黒板のリズム譜を見ながらでもかまいませんよ。)

 な べ  な べ そ こぬ け
├───────┼──────┼────────┼──────┨   ▪︎     ▪︎   ♩   ♩    ♩  ♩ 

 そこが ぬけたらかえりましょ
├─────┼──────┼─────┼─────┼─────┼────┨ ♩  ♪♪ ♩  Z   ♩ ♪♪  ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♩

 このような〈一人2声〉の力を付けるための最初の段階は、子ども達が拍を感じながら歌う‥ということです。そのためには、拍通りに歩きながら歌えるかどうか?‥あるいは歩きながらリズムが叩けるか?やってみればよいのです。↓

歩く‥ ♩   ♩   ♩  ♩   ♩   ♩   ♩  ♩       ────────────────────────────
歌う‥ な べ  な べ そ  こぬ け
   ────────────────────────────
叩く‥ ♩   ♩   ♩  ♩   ♩   ♪♪  ♩  Z

 この〈一定の拍を感じながら‥〉という部分を〈一定のリズムパターンを叩きながら‥〉に替えれば、それが《リズムオスティナート》という手法になります。

 な べ な べ そ こぬ け
├──────┼──────┼───────┼──────┤
  Z  ♩   ♪♪ ♩   Z  ♩    ♪♪ ♩

 そこが ぬけたらかえりましょ
├─────┼──────┼─────┼──────┨ 
 Z  ♩  ♪♪ ♩   Z  ♩   ♪♪ ♩

(※歌いながらリズムも自分で叩く。)

 このようなリズムパターンは、はじめのうちは先生が考えるとよいでしょう。みんなが歌っている間に、先生がさり気なく叩いて聞かせ、「今、先生は何をした?」「どんなリズムだった?」と聞きます。分かった子が黒板にそのリズムを書き、みんなでそのリズムを叩きながらもう一度歌います。

 このオスティナートは、もちろんリズムだけでなく、メロディーでも作ることができます。

 な べ  な べ そ こぬ け ├──────┼──────┼───────┼─────┤
 かえりま しょ  かえりま しょ


そ こが ぬけたら かえりま しょ ├─────┼──────┼───────┼─────┨ 
かえりま しょ   かえりま しょ

 オスティナートがメロディーの場合には、当然一人では歌えませんから、クラスを2つに分けたり、二人組で練習することになります。

  その他にも‥、

‥  ‥

●拡大カノン(‥片方の声部のメロディーだけ、リズムを倍の長さに引き伸ばして歌う。)

 か ー ご め  か ご め├──────┼──────┼───────┼──────┤
 かーーーーーーー ごーー めーー


 か-ごの な-かの と-り- はー
├─────┼──────┼───────┼──────
 かーー ごーー めーーーーーー

●縮小カノン(‥片方の声部だけ、リズムの長さを半分して歌う。)

 とぅふ  や の  あ と  か ら ├──────┼──────┼───────┼──────┤
   ▪︎    ▪︎    ▪︎    ▪︎


 こ ぶ  た が  ぶー   ぶー ├──────┼───────┼───────┼─────┤
  とふやの  あとから  こぶたが  ぶーぶー

●しっぽつけコーラス(‥フレーズの終わりの部分だけ〝合いの手〟のようにカノンにする。)

 な べ な べ そ こぬ け├──────┼──────┼───────┼──────┤                そ こぬ 


 そ こがぬけたらかえりま しょ ├─────┼──────┼──────┼──────┼────        け                  かえりま しょ

●クオドリベ(‥2つの違うわらべうたをワザと同時に歌う。)

 な べ な べ  そ こぬ け ├──────┼──────┼───────┼─────
 ぼーさんぼーさん どこいく の


そ こが ぬけたら かえりま しょ ├─────┼──────┼───────┼─────┨ 
わたしはたんぼに いねかり に

‥など、様々な方法があります。

‥ ‥ ‥ 

 このような簡単な合唱なら、子ども達は、もちろん楽譜無しでも(先程のようなやり方で)耳から覚えて歌えるようになります。

 ‥が、しかし、それを敢えて2声体の綺麗な楽譜に起こして子ども達に配り、「二人組で自由に練習してごらん」‥というような時間も作ってみてください。子ども達はそれを使って色々と工夫・分析を始め、『楽譜があるって便利なんだなぁ〜!』‥ということも実感するようになるはずですから‥。

‥ ‥ ‥

 さて‥、

 もう一つの、【b】音の高さの違いを楽しむポリフォニー‥については、まだ詳しくお話していませんでしたね。こちらにも重要なポイントが一つありますので、短くご説明させていただきます。

 この【b】音の高さの違いを楽しむポリフォニーの代表‥と言えば、やはり、中世の時代に発展した〝オルガヌム〟でしょう。

(第23回につづく)

 

 

 

 

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