〜【ポリフォニーと和声】⑦〜
ひと口に〝ポリフォニー〟と言ってもその種類には色々なものがあります。しかし、それは大雑把に分けて、次のような2つの系統に分類できるでしょう。。 ↓
【a】リズムの違いやズレを楽しむポリフォニー
【b】音の高さの違いを楽しむポリフォニー
例えば、先程のわらべうたのカノン等は、どちらかと言えば【a】の要素の強いポリフォニーだと思います。
試しに、「なべなべ」のカノンを(‥内的聴感の練習も兼ねて‥)黙ってそのリズムだけ叩いてみてください。
♩ ♩ ♩ ♩ ♩ ♪ ♪ ♩ Z
├───────┼──────┼────────┼──────┨
▪︎ ▪︎ ♩ ♩ ♩ ♩
♩ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♩ Z
├─────┼──────┼─────┼─────┼─────┼────┨
♩ ♪♪ ♩ Z ♩ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♩ Z
カノンですから、当然、リズムだけ叩いてみても違った動きをしていることがわかります。
このリズム譜を黒板に書いて、子ども達に二人組で練習させれば、それだけでも楽しい課題ですが、さらに〈本当に子ども達が相手の動きを意識しながら歌っているのか?〉‥ということを確かめるために、これを一人でやらせる方法もあります。
つまり「なべなべ」を歌いながら、自分でそのリズムも同時にカノンで叩くのです。(‥もちろん黒板のリズム譜を見ながらでもかまいませんよ。)
な べ な べ そ こぬ け ├───────┼──────┼────────┼──────┨ ▪︎ ▪︎ ♩ ♩ ♩ ♩ そこが ぬけたらかえりましょ ├─────┼──────┼─────┼─────┼─────┼────┨ ♩ ♪♪ ♩ Z ♩ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♪♪ ♩
このような〈一人2声〉の力を付けるための最初の段階は、子ども達が拍を感じながら歌う‥ということです。そのためには、拍通りに歩きながら歌えるかどうか?‥あるいは歩きながらリズムが叩けるか?やってみればよいのです。↓
歩く‥ ♩ ♩ ♩ ♩ ♩ ♩ ♩ ♩ ──────────────────────────── 歌う‥ な べ な べ そ こぬ け ──────────────────────────── 叩く‥ ♩ ♩ ♩ ♩ ♩ ♪♪ ♩ Z
この〈一定の拍を感じながら‥〉という部分を〈一定のリズムパターンを叩きながら‥〉に替えれば、それが《リズムオスティナート》という手法になります。
な べ な べ そ こぬ け ├──────┼──────┼───────┼──────┤ Z ♩ ♪♪ ♩ Z ♩ ♪♪ ♩ そこが ぬけたらかえりましょ ├─────┼──────┼─────┼──────┨ Z ♩ ♪♪ ♩ Z ♩ ♪♪ ♩ (※歌いながらリズムも自分で叩く。)
このようなリズムパターンは、はじめのうちは先生が考えるとよいでしょう。みんなが歌っている間に、先生がさり気なく叩いて聞かせ、「今、先生は何をした?」「どんなリズムだった?」と聞きます。分かった子が黒板にそのリズムを書き、みんなでそのリズムを叩きながらもう一度歌います。
このオスティナートは、もちろんリズムだけでなく、メロディーでも作ることができます。
な べ な べ そ こぬ け ├──────┼──────┼───────┼─────┤ かえりま しょ かえりま しょ そ こが ぬけたら かえりま しょ ├─────┼──────┼───────┼─────┨ かえりま しょ かえりま しょ
オスティナートがメロディーの場合には、当然一人では歌えませんから、クラスを2つに分けたり、二人組で練習することになります。
その他にも‥、
‥ ‥
●拡大カノン(‥片方の声部のメロディーだけ、リズムを倍の長さに引き伸ばして歌う。)
か ー ご め か ご め├──────┼──────┼───────┼──────┤ かーーーーーーー ごーー めーー か-ごの な-かの と-り- はー ├─────┼──────┼───────┼────── かーー ごーー めーーーーーー
●縮小カノン(‥片方の声部だけ、リズムの長さを半分して歌う。)
とぅふ や の あ と か ら ├──────┼──────┼───────┼──────┤
▪︎ ▪︎ ▪︎ ▪︎
こ ぶ た が ぶー ぶー ├──────┼───────┼───────┼─────┤
とふやの あとから こぶたが ぶーぶー
●しっぽつけコーラス(‥フレーズの終わりの部分だけ〝合いの手〟のようにカノンにする。)
な べ な べ そ こぬ け├──────┼──────┼───────┼──────┤ そ こぬ そ こがぬけたらかえりま しょ ├─────┼──────┼──────┼──────┼──── け かえりま しょ
●クオドリベ(‥2つの違うわらべうたをワザと同時に歌う。)
な べ な べ そ こぬ け ├──────┼──────┼───────┼───── ぼーさんぼーさん どこいく の そ こが ぬけたら かえりま しょ ├─────┼──────┼───────┼─────┨ わたしはたんぼに いねかり に
‥など、様々な方法があります。
‥ ‥ ‥
このような簡単な合唱なら、子ども達は、もちろん楽譜無しでも(先程のようなやり方で)耳から覚えて歌えるようになります。
‥が、しかし、それを敢えて2声体の綺麗な楽譜に起こして子ども達に配り、「二人組で自由に練習してごらん」‥というような時間も作ってみてください。子ども達はそれを使って色々と工夫・分析を始め、『楽譜があるって便利なんだなぁ〜!』‥ということも実感するようになるはずですから‥。
‥ ‥ ‥
さて‥、
もう一つの、【b】音の高さの違いを楽しむポリフォニー‥については、まだ詳しくお話していませんでしたね。こちらにも重要なポイントが一つありますので、短くご説明させていただきます。
この【b】音の高さの違いを楽しむポリフォニーの代表‥と言えば、やはり、中世の時代に発展した〝オルガヌム〟でしょう。
(第23回につづく)
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