〜【ポリフォニーと和声】⑪〜
美しい合唱を作るためには、何よりも各パートが、お互いによく溶け合う純正な音程で歌うことが大切です。
ソルミゼーション(=移動ド)は、子どもたちがこの(‥平均律ではない‥)純正で美しい音程で歌う感覚を身に付ける‥という上でも大変大きな力を発揮するのです。
‥ ‥ ‥
このことをご説明するためには、まず、〈平均律〉と〈純正律〉の違いについてお話しておかなければなりません。
‥ ‥ ‥
まず、下の図を見てください。これは平均律の音程間隔を表にしたものです。👇
do━━━━━━
ti━━━━━┓ \(半音)
(全音)/
la━━━━━┫
(全音)
so━━━━━┫
(全音)
fa━━━━━┛
mi━━━━━┓ \(半音)
(全音)/
re━━━━━┫
(全音)
do━━━━━┛
このように、ソルミゼーションは、隣り合う音同士の間隔に〈全音〉と〈半音〉の二種類があります。この二種類の音程の違いがあるからこそ、子どもたちはソルミゼーションを使って相対的に音程を把握し、メロディーを正確に歌えるようになるわけですよね。
‥ ‥ ‥
ところが‥、実は、この2つの違いを歌い分けるだけでは、本当の美しい合唱を作る‥ということまではできません。
‥と言いますのも、〈平均律〉は、実は、1オクターブの中を〈半音〉と〈全音〉の二種類だけの音程に無理矢理に均等に割り振ってしまった人工的な音階だからです。ですから、(ピアノやパイプオルガンの調律などには大変便利なのですが‥)この平均律で歌っても、音と音が完全に溶け合う‥ということが全く無く、合唱をしても美しい響きは生まれてこない、ということになってしまうのです。
本来の純正な音階は、もうちょっと複雑な音程でできています。👇
《長調の場合》 do━━━━━━ ti━━━━━┓\(自然半音) ┃ ┃(大全音) ┃ la━━━━━┫ ┃ ┃(小全音) so━━━━━┫ ┃ ┃(大全音) ┃ fa━━━━━┛ mi━━━━━┓\(自然半音)=111.7 ┃ ┃(小全音) =182.4 re━━━━━┫ ┃ ┃(大全音) =203.9 ┃ do━━━━━┛ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ※平均律の、半音を=100 全音を=200 ‥とすると、 自然半音=111.7 小全音=182.4 大全音=203.9 ‥程の割合になります。
『なんだ⁈なんだ⁉︎‥こんな微妙な音程差を子どもに分らせようってーの?‥そんなこと本当にできるのかぁ〜⁈』 ‥疑問に思われた方もあるかもしれませんね。しかしご心配はいりません。この音程差を別に子どもたちに理論的に教えなさい‥と言っているわけではないからです。
‥ 子どもたちは、あくまでソルミゼーションの助けを借りて、この純正なよく溶け合う響きを感覚として感じ取り、またいつでもそのような音程で歌えるように〝慣れてゆく〟ようにすることが大切だ‥ということなのです。
『われわれのほとんどの歌唱指導者と合唱団のリーダーは,ピアノに合えば,音程の問題はすんだもの,と信じている。今日の,ピアノ=アコーディオン文化,すなわち非文化においては,合唱の清潔さが,純正調の清潔な音程に基づいており,したがって,平均律に調整されたピアノの音程とは,全く無関係であることが,すっかり忘れ去られている。』 『音程の清潔さということは,気むずかしやのやる道楽ではない。(小さい子どもや,地方の青年の合唱団が,きたない音程でうたうことを,“まあ, かわいらしい!" とか, “素朴で親しみがある。〟とかいう人がいる)清潔な音程でうたうことは,個人個人の耳が掃除され,磨かれるだけでなく、合唱全体の響きをより満ちたものにし, その美しさの基礎をもなすものである。イントネーションが悪いと,響きがにごり,響きそのものが妨げられる。音程の清潔なコーラスだけが,ほんとうの色とかがやきをもってうたうことができる。』 〜コダーイ「音程を清潔に歌おう!」のまえがきより(1941年)〜
さて‥、
では、この純正な音程感覚を子どもたちに身につけさせてゆくには、どのような手順が必要になるのでしょうか?
それは、実は〈倍音の法則〉を活用すればいいのです。そこから説明させていただきますね。(‥それ程難しい話ではありませんので是非お付き合いください。)
(第27回につづく)
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